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執筆者の写真Waseda ICC

フランス留学体験記

Bonjour!


フランスへ留学のため半年間休職していたSSLのR.S.です。フランスの主要都市の中では最も南に位置するトゥールーズという街で留学していました。エアバスの本社がある街ということで耳にしたことのある方がいるかもしれません。


今回は、フランスへの留学記をICCブログで共有したいと思います。


◆個性豊かな地方都市

まずはヨーロッパ留学の醍醐味、旅行についてです。留学中はフランスの地方都市によく旅行しました。フランスには小さくて素敵な町が国内各地に存在します。それぞれの町が特有の料理、建築様式、言語を誇りにし、大切に継承しています。そのため、町ごとに体験できるものが全く異なり、旅行したい場所が尽きませんでした。私が留学していたトゥールーズ周辺には、フォワグラの産地であるオーシュ、ワインで有名なガイヤック、もっとも美しい村として登録されているサンシルラポピー、巡礼の地やチーズで有名なロカマドゥールなど素敵な地方都市がたくさんありました。実はトゥールーズ周辺のエリアは特に観光地ではありません。それなのにもかかわらず、このように個性豊かな地方都市がたくさんあります。フランスの地方都市の個性が強い要因は色々考えられますが、まず、各地方の伝統につき、地域をあげて公権力のもと、守ってきたことが考えられます。フランスの多くの地方都市ではフランス革命以後、国民国家成立の過程で地方自治体(コミューン)が図書館、劇場、音楽学校を設置して運営し、さらに地域の文化団体や学界への助成をおこなってきたという歴史があります。そして近代になってからは、1981年に文化大臣に就任したジャック・ラングにより、地域文化の活性化が図られました。それまでは保護すべき芸術・文化というとバレエ、オペラ、オーケストラ等上流階級の一部の人々の間のものという認識がありましたが、ラング元文化大臣が人形劇、オペレッタ、サーカス、料理といったように芸術・文化を幅広く定義し、保護の対象とすることで、地域文化は積極的に守られてきました。また、近年は人口2,000人以下で都市化されておらず、歴史的建造物・自然遺産を含む保護地区を最低2か所以上保有するなどの、厳しい条件をクリアした村を、「もっとも美しい村」として認定しています。こうした公的機関のバックアップのもとフランスの各地方都市の個性豊かな伝統文化が守られてきたと考えられます。



「リヨンの人形劇 ギニョール」

また、フランス人がどの層の人々も地域の伝統や歴史への理解が深い傾向にあることも要因として考えられます。よく、フランス人は週末に歴史書を読んで過ごすといいます。フランスでは日曜日に営業している店はほとんどありません。それは、キリスト教において仕事は神から与えられた苦痛であるという考え方があり、休む時間を非常に大切にするからです。よって、日本のように日曜日は町でショッピングということはなく、家やその周辺でゆっくりと休日をすごします。そのような時間があると、家族で郷土料理を作ったり、本を読んだり、博物館・美術館へ行ったりと、地域の伝統や歴史を学ぶ機会が自然と増えます。日本のように博物館やテレビを見るといったように、何か行動を起こして歴史を学ぶのとは異なり、前述したような休日の過ごし方を通して伝統文化に対して自然と愛着が生まれているのかもしれません。


◆魅力的な個人経営の店とフランス人のチェーン店嫌い

フランスは日本ほどチェーン店の立場が強くないです。一般に、フランス人はチェーン店を避ける傾向にあります。それについて留学中、現地の友人から何度も言われましたし、街で生活をしていて伝わってきました。現地の友人には、「町の中心にあるマックやスタバは観光客のためで、現地人は使わない。」と言われたことがあります。また、日本やイギリス、ドイツにあるようなファミレス文化はありません。街でファストフード・チェーン店の代表格のマックの内装やメニューを見ていると、ここまで努力しないとフランスで生き残ることはできないのかと驚きました。店の壁には、トゥールーズの古い時代の写真が飾ってあり、机やイスは落ち着いた色に統一されていました。また、メニューはサラダボウルやベジタリアン用のサラダラップのようなメニューが充実しており、環境や健康意識の高いフランス人の心を掴もうと手の込んだメニュー開発が行われていることが伝わってきました。フランスは個人経営の店が充実しています。町の中心部も個人経営の店がたくさんあり、食材は周辺で採れたものを集めたおしゃれな雰囲気の店や週3日ほど開催されるマルシェで買い、服やインテリアもデザイナーや製造場所が分かる形の個人ブランドが充実していました。一方で、日本で個人経営のレストランやブティックというと、中心街からすこし離れた場所で、お高そうで入りにくそうなイメージがあったり、逆に周辺住民のお得意さんしか行かないのではないかと思って入店を躊躇うことがあると思われます。


ただし、フランス人はただみんなと違う服が着たい、今この場所・時間でしか食べられないものが食べたいという個人の欲望のみに基づいて、そのような店を選ぶのではないと私は思います。フランス人はとても社会的意識が高いという国民性を持っています。トゥールーズでは毎週土曜日、教育、社会保障や労働環境を問題にしたデモが必ず起きていました。また、環境問題への姿勢は徹底しており、店でプラスチックストローやビニール袋をもらうことは全くありませんでした。こうした社会問題への意識の高さを考えると、彼らはチェーン店による大量消費・大量廃棄という社会問題を認識して、個人経営の店を選ぶ傾向にあるのかもしれないと考えるようになりました。


2013年バングラデシュにて、あるビルで劣悪な労働環境のもと、ファストファッションの製造がおこなわれており、そのビルが倒壊して多くの犠牲者を出したという痛ましい事故がありました。その事故を契機にヨーロッパの国々では、シーズンごとに大量で多様な種類の服が売り出される裏では、劣悪な環境で働かされている低賃工がいるという問題意識が広まりました。そのような問題に加担したくないという思いで、ちょっと値段は張りますが個人経営の店を利用しているのかもしれません。


◆オクシタニー地方トゥールーズへ行ってみませんか

最後に、留学先のトゥールーズの紹介をしたいと思います。トゥールーズはオクシタニー地方にあります。ハンドクリームの「L’Occitane en Provence」というブランドを聞いたことがありますか?駅ビルやショッピングモールでよく見かけることがあると思います。訳すとプロヴァンスのオクシタンという意味になりますが、それぞれ南フランスに位置し、東がプロヴァンス、西がオクシタニーに分割できます。ニースやマルセイユに代表され、フランスの天国のような人気観光スポットとして有名なプロヴァンス地方に対し、あまり観光のイメージがないのがオクシタニー地方です。ヨーロッパ人のバカンスには欠かせないビーチがないこと、そしてパリから離れているのに加え、パリとトゥールーズの間は山が多く、TGVの直通運転がないことが観光地としての発展のマイナス要因となっています。しかし、トゥールーズはフランス第4の都市ということで人口が多く、農業が盛んで、ワインやチーズの産地があり、活気あるマルシェや蚤の市が開催され、世界的に評価されているキャピトル交響楽団やバレエ団を有し、フランスらしいものを一通り経験することができます。また、エアバスの本社があり、コンコルドなど航空史上重要な機体の展示をする博物館もあります。


トゥールーズは航空産業に加え、パステルブルーとバラ色の街並みで有名です。周辺にはパステル交易で栄えた町がいくつかあります。ルネサンス時代、パステルブルーの染料を抽出する植物が採れるということで名声を築き上げました。街にはパステルを使ったスキンケア商品やスカーフなどを扱ったブティックがあります。また、パステル交易で富を築いたアセザ家の美術品のコレクションを展示した館が観光スポットとなっています。


フランスは一般に石造りの建物が多い中、トゥールーズ周辺は建物に適した固い石がとれなかったため、煉瓦づくりの建物がメインです。昔は煉瓦がオレンジ色だったそうですが、長い年月を経てピンク色になったということで、現在はピンク色の煉瓦の”La ville rose”(バラ色の街)と呼ばれるようになりました。フランスの中でも特にスペインに近く、冬も東京よりは暖かい街中には、テラス席の付いたレストラン・カフェがたくさんあります。バラ色の街並みに囲まれながら、現地の食材を使った郷土料理をテラス席で味わえたら、最高の思い出が作れると思います。


「トゥールーズの街並み」

「トゥールーズの郷土料理 カスレ」

「トゥールーズの市庁舎(キャピトル)」

ICCではお昼を食べながら言語を練習したり、互いの文化を学びあうランゲージ・ランチを定期的に開催しています。フランス語圏を対象にしたフレンチ・ランチもあります。ぜひランチイベントに参加して、サポーターたちの出身の街について色々聞いてみてください。


À bientôt!


R.S(学生スタッフ)

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